『易経』勉強記録

乾卦の精神 ― 「刚健不已」と「自彊不息」

乾卦とは

易経六十四卦の第一卦である「乾(けん)」は、六つの陽爻から成り、純粋な「天」を象徴します。乾卦は天地自然の根源的な力を示し、その徳は「剛健」であり、絶えず動き続けることにあります。

刚健不已(ごうけんやまず)

「刚健不已」とは、天そのものの徳を表した言葉です。

  • 刚健:力強く健やかであること
  • 不已:止むことがない、休むことがない

つまり、天は剛健であり、絶えず運行を続けている、という意味です。

自彊不息(じきょうやまず)

「自彊不息」は、君子が学ぶべき姿勢を表す言葉です。

  • 自彊:自らを強める努力
  • 不息:休まず続ける

「天行健、君子以自彊不息」
天の運行は健なり、君子はこれを見習い自ら努力をやめない

君子は天の剛健さを学び取り、絶えず自己を鍛え、成長を続けることを目指すべきです。

現代的な意味

  • 刚健不已 → 「自然は常に動き続ける」
  • 自彊不息 → 「人もまた努力を止めてはならない」

坤卦の精神 ― 「厚徳載物」

坤卦とは

易経六十四卦の第二卦である「坤(こん)」は、六つの陰爻から成り、純粋な「地」を象徴します。受容・柔順・包容といった徳を持ちます。

厚徳載物(こうとくざいぶつ)

  • 厚徳:厚い徳、寛大で深い徳
  • 載物:万物を載せる、すべてを支える

大地がすべての生命を受け止め、育み、支えているように、君子もまた厚い徳によって他者や社会を支えるべきことを示しています。

乾坤の対比

  • 乾卦(天):「刚健不已」「自彊不息」 → 力強く進む
  • 坤卦(地):「厚徳載物」 → すべてを受け止める

泰卦の精神 ― 「天地交泰」

泰卦とは

泰卦は上卦が乾、下卦が坤で構成され、天地が交わり調和する姿を象徴します。陰陽が調和した最も安定した状態です。

象徴する意味

  • 泰:通じる、安らぐ、順調である
  • 天地交泰:天と地が交わり、すべてが順調に運行する

君子の姿勢

  • 物事が順調なときこそ謙虚さを忘れない
  • 成功や繁栄は永遠ではないため、感謝と調和を大切にする

現代的な意味

  • 仕事:順調だが油断せず調和を大切に
  • 人間関係:協力体制が築けるが傲慢さに注意
  • 人生全般:繁栄や幸福の時期、謙虚さとバランス感覚が重要

否卦の精神 ― 「天地不交」

否卦とは

上卦が乾、下卦が坤で構成され、天と地が交わらず、陰陽の調和が失われた状態を象徴します。停滞・不調・障害を示す卦です。

象徴する意味

  • 否:通じない、塞がる、障害がある
  • 天地不交:天と地の徳が交わらず、物事がうまく進まない

君子の姿勢

  • 困難や停滞の時こそ内面を正し、外に惑わされない
  • 無理に事を進めず、状況の改善を待つ
  • 後に来る泰(繁栄)の時に備える

現代的な解釈

  • 仕事:思うように進まない時期、焦らず調整
  • 人間関係:意見が対立、無理に押さず相手を尊重
  • 人生全般:停滞や困難は一時的、自分を鍛える機会

泰卦との対比

  • 泰卦:天地交泰 → 繁栄・順調・調和
  • 否卦:天地不交 → 停滞・障害・不調
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